映画を観ているかのように情景が浮かぶ短歌集
こんなタイトルをつけようと考えついたなんてすごいな。タイトルと装丁に惹かれて購入。
なんて素晴らしいタイトルなんでしょう。
1ページに短歌が1つずつのっている本です。(すごいざっくりな説明)
……五七五七七って「短歌」で合ってたっけ? (グーグルで調べる)…合ってるわ。
それぐらいふだん短歌になじみがないですが、とても読みやすい本でした。
人の少ない映画館でレイトショーを観てるような。映画を観終わって静かに余韻を感じているような。そんな本。
1ページにぽつんと1つの短歌が書かれているんですが、余白がいいんですよね。歌そのものももちろんいいです。
ひとつひとつ、情景がリアルにイメージできて。
あっ、これいいな、と思った歌。
「自転車に乗れない春はもう来ない乗らない春を重ねるだけだ」
ここしばらく乗らずに自転車置き場に放置したまんまになっている自転車。近々掃除しよー…と思いました。面倒でずっとそのままにしてる。
「自転車に乗れない春」ってもう来ないんですよね。ふだん考えもしなかったけれど。自転車に乗れない春って数えるほどしかなかったな。…なんて思ったり。
「もうずっと泣いてる空を癒そうとあなたがえらぶ花柄の傘」
乙女ちっく。この情景がリアルに思い浮かぶ。
乙女ちっくばかりでもない。むしろそうじゃないもののほうが多い。
乙女ちっく、というのも、私がそうとらえただけで作者はそんなつもりではないかもしれないし、読む人によってはそうは思わないことだってあると思う。
「雪を着る墓の匿名性を手で払って祖父を探す夕方」
読むときによって、いいと思う歌って違うんだろうな。
ぐっときたり切なくなったり、わけがわからなかったり、しんみりしたり。
好きな歌がきっと見つかると思います。